事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

個人の処分に対して闘う労組か・諦める労組か~労働組合はひとりひとりの組合員が基礎だから


日本郵政の労働組合が抱く強烈な危機感の裏側 | 最新の週刊東洋経済 | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

こういう記事を読んだ。

一言で言えば「悲惨」だ。

 

労使協調・労使一体の会社において、その会社のあり方・根本から問い直されるような不祥事や破綻が生じることは、決して珍しくない。

それは、労使協調・労使一体の体制のなかで、労働組合側が本来の目的を放棄し、使用者側の不法・非道行為が発覚してもまともに批判・追及することもなく、あまつさえその原因をつくる一員だったりすることも、大きな要因だ。

 

東芝だって三菱電機だって電通だって、人数だけは多い労働組合は一応あって、でもあんな職場を作ってきた。

 

歴史として聞いたことがある「権利の全逓」の、悲惨ないま。

なんだろう。

それでも、インタビューに答えて、彼らなりの思いを知る機会を与えてくれたこと、彼らなりの思いを語ったことには、せめて敬意を表したい。

 

しかし、悲惨だ。

以下はすべて、JP労組執行委員の弁だ。

 

たとえ上司から指示があったとしても、悪いことだと知りながら不適正募集をやってしまった社員は、やはり処分は真摯に受け止めないといけない。

 

処分自体は会社の専権事項なので、JP労組との交渉によって方向性を整理する対象にはならない。

 

会社のほうでも、かんぽ生命の調査に基づき弁護士とも相談しながら渉外社員の処分を決めるという手順は踏んでいる。その部分については会社と交渉することはできない

 

上司、管理者が問題のある指導を本当にしたのかどうか、という部分については正直なところ、どこまで行っても証拠にグレーな部分は多い。 文書に残っている指示や指導も、「犯罪をしてまで契約を取れ」という内容だと断定的に読めるものなのかといえば、そうとは言い切れない。また、口頭で「言った」「言わない」という食い違いの部分については、なかなか証明できない。

 

不適切な営業によって、お客様にご迷惑をおかけして獲得した契約に付随した手当については、社員は返納請求を受け止めなければならない。ただ、その返納請求が、募集人(渉外社員)に対して正しい調査をしたうえでのものなのかどうかがいちばんの問題点だ。調査の結果、契約の無効化に整合性があるものであれば、返納請求の再開は受け止めざるをえないと思っている。

 

「悪いことと知りながらやったこと」というのが、やるように仕向けられたこと、やらざるをえなかったこと、なのではないかという問題を伴うにも関わらず、その観点がない。

 

様々な事情があったことは認識しつつも、「でもやった労働者にも問題があるのだから処分されても仕方ない」「賃金減少も手当返納も仕方ない」。「上司の指示があったかは証拠がない・文書があっても判断はグレー」。

徹底した自己責任論と当局免責。

 

「処分は会社の専権事項」

制度上はそらそうかもしらんが、同時に司法判断の対象でもあって、つまり労働組合でも主張は可能。組合員の立場にたって主張することさえしない、その理由は、その道理はどこにあるのか。

 

総じて、当局に異常に甘く組合員・労働者に厳しいスタンス。

 

文末。インタビュー記者の感想が記されているが、「論理の一貫性や整合性の高さ」を感じたという。

なるほど確かに、労使一体の一貫性と整合性はよく感じられた。

 

しかし、「労働組合の論理」が根本的に欠如していることもよくわかる。

 

労働組合は、ひとりひとりの組合員が基礎だ。それが忘れられてはいけない。