事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

川崎市人事委員会勧告出る~期末手当引下げが会計年度任用職員に及ぶ不条理

昨日10月5日、川崎市人事委員会による給与勧告が出された。
内容は月額給据え置き・ボーナス0.15月引下げ4.3月、というマイナス勧告だ。


https://twitter.com/it_zgrr/status/1445502863111716865


マイナスの影響はボーナスを受給するすべての職員に及ぶ。
労働組合役員としてこんなことを言うべきではないかもしれないが、無期常勤職員(いわゆる「正規職員」)については、公民比較の結果として現行法制度のもとではそういう勧告になるということは受け止めざるをえない。

しかしそれ以外の職員……主には有期雇用職員について、労働基本権を制約された上に任用論によっても民間雇用よりも権利制約がかけられている実態も踏まえ、その特有の状況を踏まえた賃金検討を人事委員会はしているのかといえばしていないわけで、にもかかわらず無期常勤職員の賃金改定を機械的にこれら有期雇用職員に適用することに対しては、現行法制度においても不作為であると考える。

その上、とりわけ今回の期末手当引下げについて言えば、これを会計年度任用職員にまでそのまま適用するのはあまりにも不条理である。
そういう経過がある。

会計年度任用職員の制度は地公法改正施行を受け、2020年度から始まった。
川崎市においても、それまで特別職非常勤職員と臨時的任用職員として雇用されていた有期・短時間(フルタイムではない、という意味の)雇用職員は、会計年度任用職員に位置付けられることとなった。
施行前年度。この制度設計に当たって川崎市当局は、それまで月額給職員として勤務し、会計年度任用職員制度の中では新たに期末手当の支給対象となる職種について、期末手当を含む年収ベースで見て制度以降前後で微増となるよう、移行後の基本給を算出。その基本給額に対応する給与号を初任給相当号に位置付けた。
会計年度任用職員制度では、それまでは根拠が不明確だった時給・日給・月給について、職種ごとに職務内容等を踏まえて初任給相当号を決定し、時給・日給・月給もそれを算出根拠に支給すること、とされていた。
しかし川崎市当局の決定方法は職務内容とは無関係に、従来の年収から逆算して初任給相当号を導き出すやり方であった。その背景は、期末手当を支給することとなっても人件費を上昇させないと意図があったと断定して良いだろう。

これにより、月額給はむしろ下がることとなった。
繰り返しになるが重要なのは、月額給が下がったのは職務内容に応じて決定されたものではなく、当時年間2.6月の期末手当を前提として、その支給を含めれば年収では微増となるから良いだろう、という論理からだ。
これが2019年度中の話。

さて、2020年度。コロナ禍の影響を受け日本経済は収縮。
この影響で市人事委員会はボーナス0.05月引下げ勧告。労使交渉で引下げは期末手当からとされた。
そして今年度。川崎市人事委員会はボーナス0.15月引下げ勧告。加えて初めて、引下げは期末手当から差し引くようにとも明言した。

勧告をもって賃金が決まるわけではない。
しかし、仮に今回の人事委員会勧告の実施を前提とした場合、会計年度任用職員については制度設計時に想定された期末手当2.6月が、実際には施行2年目にして2.4月にまで減ることとなる。
その影響は無期常勤職員の期末・勤勉手当4.5月から4.3月に比較して、比率としては遥かに影響が大きい。
その上、そもそも期末手当2.6月を前提に月額給は下げられている。

これはあまりに不条理だ。不正義だ。

2019年12月。すでに川崎市も含め多くの自治体で会計年度任用職員の賃金制度が固まっている時期になって、総務省は通知を出した。
期末手当支給に伴う人件費の抑制を目的に月額給を低く抑えるような初任給相当号の設定は制度の趣旨に反する、という趣旨だった。
国の動きも遅きに失した嫌いがあるが、ともあれ川崎市の制度は、これに抵触している。

同様の問題は、川崎市だけでなく同じよう発想で会計年度任用職員の賃金制度を構築した自治体すべてに共通する。
ボーナス引下げと期末手当からの差し引きという傾向も全国的に同様だろう。
会計年度任用職員制度は、少なくない自治体で始動に当たり制度設計を誤った。
今からでも是正させなければいけない。