事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

【調査報告】共同実施・共同学校事務室と「事務の適正化」の実態~着服・横領事例はすべて共同実施導入自治体

学校事務の共同実施・共同学校事務室の意義のひとつとして、「事務の適正化」は必ずといっていいほど挙げられるものです。

ほかに、「事務職員の育成及び資質の向上」「事務処理の質の向上」も同じ系統と言えるでしょう。

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なるほど、確かに同じ職種同士で集まって情報交換や業務の相互チェックをすれば、「事務の適正化」が図られるとする考えには一理あると思います。

しかし、それは共同実施や共同学校事務室が「情報交換や業務の相互チェック」という機能にとどまっている範囲においては、のことです。

それにとどまらず、共同実施や共同学校事務室が事務職員の人員削減や担当業務増をもたらすようになった場合、つまり労働環境の悪化をもたらした場合において、なお「事務の適正化」は担保されるのか。

私は強い疑念を抱きます。

 

一般に、労働環境が悪くなればなるほど、故意か過失かは別にして業務の適正性は低下します。それは学校事務職員の場合も同じです。

 

そうした課題もひっくるめて、共同実施・共同学校事務室は本当に「事務の適正化」につながるものであるのか。

机上の想定ではなく、事実を基礎に探ってみたいと考えました。

 

ついて今回、昨年度と今年度に処分が発せられマスコミ報道された、学校事務職員(小中学校・常勤職員のみ)の業務上の行為による懲戒処分事例を収集。

合わせて、当該自治体での共同実施・共同学校事務室の導入状況と突き合わせることで、共同実施・共同学校事務室と「事務の適正化」の関係についてまとめてみました。

以下、ご報告します

 

▽報道の収集手法

利用サイト①:Ceek.jp News(https://news.ceek.jp

検索語=学校 事務職員 懲戒

除外=高校 県立学校 特別支援学校 盗撮 住居侵入 窃盗 交通違反 暴行 PTA事務職員 会計年度任用職員

検索後除外=住居侵入23.7、窃盗23.5、PTA職員23.4、高校23.3、教委職員23.3、教職員23.2、書類送検23.1(懲戒処分20年)、高校22.12、不起訴処分22.10・書類送検22.6(懲戒処分21.7)、高専22.9、会計年度任用職員分限22.8

利用サイト②:Googlehttps://google.com

検索語=学校 事務職員 懲戒

検索後除外=高校、飲酒運転、等

 

▽学校事務職員の業務上の行為による懲戒処分事例(処分の数字は月数)

23.9 政令A市 給食費請求漏れ・過大集金 50代 減3

23.8 四国B町 決裁偽造、物品購入未払・未発注 20代 停12

23.8 政令C市 決裁偽造 20代 停1

23.7 関東D市 徴収金着服 30代 免

23.7 東北(市町村不明) 就学奨励費支給遅延 50代 戒

23.6 政令E市 就学援助費横領 40代 免

23.5 関東F市 徴収金着服 40代 免

23.5 関東G市 徴収金着服 30代 免

23.3 政令H市 旅費不正受給 40代 減1

23.3 東北I市 徴収金不適切管理 20代 減1

23.2 九州J市 パワハラ 50代 停6

22.12 政令K市 不適切発注・会計処理 30代 停6

22.12 政令L市 徴収金横領 30代 免

22.11 政令M市 架空取引 30代 停1

 

▽共同実施・共同学校事務室の導入状況

文部科学省教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果」中、「学校事務の共同実施をしている」の設問に拠った。(19年度~22年度回答)

 

▽懲戒処分事例のあった自治体における共同実施・共同学校事務室導入状況

(順に2019年度~22年度の回答:○実施 △検討中 ×未実施)

A市 ○ ○ ○ ○

B町 ○ ○ ○ ○

C市 ○ ○ ○ ○

D市 ○ ○ ○ ○

E市 ○ ○ ○ ○

F市 ○ ○ ○ ○

G市 ○ ○ ○ ○

H市 × △ △ △

I市 ○ ○ ○ ○

J市 ○ ○ ○ ○

K市 ○ ○ △ ○

L市 △ ○ ○ ○

M市 × △ ○ △

 

▽分析

・過去3年(20~22年度)について、13市町中11市町・約85%で共同実施導入済みである。

・22年度時点の共同実施の実施率(都道府県を除く)は72.4%であり、懲戒処分事例のあった自治体の割合はこれを上回る。

・着服・横領による懲戒免職5市はいずれも過去4年、共同実施導入済みである。

 

 

以上の事実からは、共同実施・共同学校事務室が「事務の適正化」や「事務職員の育成及び資質の向上」「事務処理の質の向上」につながるものであるか、疑問が生じると結論付けざるを得ません。

政策の導入は、印象や誰かの売り文句ではなく、事実に基づき吟味されるべきだと私は考えます。