事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

精神疾患による休職~「教員・初の6000人超」報道の裏で「学校事務職員・初の1%超」の衝撃

文部科学省が毎年公表している「公立学校教職員の人事行政状況調査」。

昨日、2022年度の調査結果が公表されました。

 

www.mext.go.jp

 

結果概要の筆頭には、以下の内容が盛り込まれています。

 

教育職員(※)の精神疾患による病気休職者数は、6,539人(全教育職員数の0.71%)で、令和3年度(5,897人)から642人増加し、過去最多。

 

このことは昨日のうちに、大きく報道されています。

 

www3.nhk.or.jp

さてこの数年、人事行政状況調査の結果公表では、教育職員の精神疾患による休職状況に焦点が当てられています。

この人数が初めて公表されたのは2011年度調査結果から。(このとき09・10年度の結果も同時に公表)

それ以前の人事行政状況調査結果では、「指導が不適切な教員」への対応状況や「民間人校長」の登用状況がメインでした。このうち民間人校長登用状況は、最近の調査結果においてはほとんど見て取ることはできません。

同じ名称の調査公表でも経年で見ると、調査事項や概要の重点の変遷がそのまま公立学校に係る人事行政上の課題の変化を表していると考えられ、それのみに着目しても示唆に富みますね。

 

精神疾患による休職状況のお話に戻ります。

人事行政状況調査では学校事務職員・学校栄養職員精神疾患による休職状況も、教育職員に1年遅れた2012年度調査結果から、公表されています。(ただし19・20年度は調査実施されず)

私はこれをもとに、学校事務職員の精神疾患による休職状況を集計。在職者に占める同休職者割合を教育職員のそれと比較したところ、学校事務職員の方が教育職員を上回る高い割合で精神疾患による休職者が出ていること、しかも両者の差は年々拡大していることがわかりました。

 

この事実をもとに書いたのが、全学労連ニュース445号(23年2月25日)

「しんどいのは教員だけではない!事務職員が仕事を引き受けるのではなく学校業務全体の負担軽減を目指す労働組合運動を」

でした。

gakurou2006.web.fc2.com

今回、2022年度の結果を受けグラフを更新しました。

他にも関連グラフを掲載し、若干のコメントを付しておきます。

 

 

教育職員の精神疾患による休職割合は20年度までおおむね横ばいでしたが、21年度以降跳ね上がっています。

一方学校事務職員については、15年度以降右肩上がりに上がり続けており、しかも22年度調査の増加ポイントは過去最大。ついに1%を超えてしまいました。

こうした経過に由来し、学校事務職員と教育職員の割合差は拡大し続けています。22年度調査結果においてもそうした傾向は変わらず、わずかながら差が開く結果となりました。

 

割合同様、20年度まではおおむね横ばいです。人数で見ると09・10年度時点でも相当に深刻な状況があったことがわかります。

 

おおむね割合同様に推移しており、15年度以降右肩上がりに増加しています。


今回、教員の精神疾患休職者が初めて6,000人を超え、インパクトのある数字となっています。

こうした状況を是正すべく、労働条件・労働環境の速やかな改善が求められることは言うまでもありません。

そうした中で、「働き方改革」も改めて叫ばれることになるでしょう。

 

しかし目下、「働き方改革」の名の下に学校事務職員への業務転嫁(押し付け)が広がっていること。そうした取組に文科省が率先して旗を振り、教育委員会や現場校長が強行し、さらには教職員組合までもが推進していること。

それのさらなる進行は、強く強く危惧します。

 

学校事務職員の精神疾患休職率が教員を大きく上回っている現実。

学校事務職員の100人に1人が、精神疾患で休職しているという現実。

この現実を踏まえて、私は学校事務職員生活を送っていきたいと思っています。