事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

教員の負担軽減のために事務職員が仕事を引き受ける、のではなく、学校業務全体の負担軽減を目指すことが大切

昨年12月、文科省は「令和3年度公立学校教職員の人事行政状況調査について」を公表しました。

調査結果概要の中で、教員の精神疾患による病気休職者数は5,897人と前年度から694人増加し、過去最多にのぼったとしています。

報道各社もこの結果を大きく報じ、朝日新聞は翌1月に「教員の精神疾患 実質的な働き方改革を」とする社説も掲載するなど、反響を呼んでいます。


現に学校現場で働いている学校事務職員の立場からしても、教員のそうした状況はもはや身近なものです。

過重労働や長時間労働精神疾患につながることは疑いのないところ。精神疾患による病気休職者の増加、そして休職を飛び越して退職に至る教員もいる中、そうした状況を生み出す要因となっている学校の労働環境の改善が、急務であることは疑いありません。

 

しかしながら、「教員の負担軽減」「教員が子どもと向き合う時間の確保」といった言葉のもと、教員が担ってきた業務を学校事務職員に代替させ、その負担を転嫁する動きが広がっていることは大間違いだし大問題です。

教員の負担軽減は、教職員基礎定数の改善をはじめとした人員増と学校業務そのものの縮減により解決すべきであり、学校内で別の職種に転嫁して解決すべきものでは断じてないはずです。

 

そもそも、今現在でも学校事務職員の労働環境は良好なものとは到底言えません。

先の「人事行政状況調査」によれば、精神疾患による病気休職者が全体に占める割合は、教員が0.64%のところ学校事務職員は0.95%と教員より高いポイントとなっている。事務職員のポイントが教員を上回る状況は、両職種について調査が行われた2012年度以降一貫しており、しかも14年度以降その差は拡大の一途を辿っています。

16年度以降調査が行われている、休職者に加えて1か月以上の病気休暇取得者を加えた場合の割合についても同様に、事務職員のポイントが教員を上回りかつその差は拡大しています。

(※ただし19・20年度は事務職員分の調査は行われていない)


これを踏まえれば、事務職員の負担軽減も教員のそれと同様に急務であり、「実質的な働き方改革」が求められるべき状況にある、と言えます。

 

しかし事態は逆を行っています。

「必ずしも教師が担う必要のない業務」の受け皿に事務職員を名指しし、「学校以外が担うべき業務」とされた学校徴収金業務さえ学校事務職員の標準職務に盛り込み、さらには「校務運営への参画」の言葉のもと教育活動以外のありとあらゆる業務を事務職員に押し付けようとする文科省

現場を顧みることなく文科省の「働き方改革」に乗っかる教育委員会

そうした文科省・教委を批判するどころか肯定的に受け止めたうえで「主体的・積極的に学校事務をつかさどる」「自分たちから率先して学校運営に参画」などとその真の意図を糊塗隠蔽し、事務職員への業務転嫁=業務負担増を事務職員の内部から推進する日教組

同様の立場から「状況の変化、そして事務職員に対する様々な期待に対し、全国の事務職員が一丸となってより良い学校づくりに貢献していきたい」などと事務職員全体を巻き込む全事研。

こうした中央・地方・御用組合・職能団体の結託の結果が、教員より深刻な休職状況というファクトを抱える事務職員に対して、にもかかわらずさらなる負荷をかけようとする政策の進行です

 

かねて指摘していますが、「学校における働き方改革」や「標準職務」通知にあたり、事務職員の職務実態は顧みられていません。そのうえで、教員に過重に乗っている負担をただ事務職員に乗せ換えようとしているだけの話しかしていないのです。事務職員がそれに耐えられるかどうかは考えることもなく。

 

精神疾患による病気休職者の割合における事務職員と教員の差が、14年度以降拡大し続けたことは先述しました。これは教員の割合が基本的に横這いで推移してきたのに対して、事務職員のそれは同年度以降上昇し続けてきたためです。

その14年度といえば「チーム学校」の名のもと、教員が教育活動に専念できる環境をつくるため事務職員を「活用」する…要するに教員が担っている業務を事務職員に転嫁する方向性が打ち出された年にあたります。

以来、表看板は「チーム学校」から「働き方改革」に架け替えられつつもその方向性はますます強められてきた。17年の「つかさどる」学教法改正や20年の「標準職務」通知もこれに連なるものです。

日教組や全事研は一連の動きを基本的に歓迎して遇してきました。のみならず組合員・会員に、これに沿った意識改革や業務負担受け入れを指導する態度を取り続けてきました。彼ら彼女らこそ多くの学校事務職員を休職に追い込む状況を作り出した、共犯者ではないでしょうか。

自治労の学校事務組合も同様のようです。最近知ったところ。

n-gakujiso.com

“「学校事務をつかさどる」ため、「職位別標準的職務表」の活用・定着を進める”

と謳っています。

私には到底理解しかねます。

「職位別」なんて、まさに使用者側による労働者分断・差別の道具だと思うし、「こういう職位だからこういう仕事も請け負え」という労働強化の論理でもあると思うのですが。


今般の学校現場、そこで働くすべての教職員にとって必要なのは学校業務全体の負担軽減であって、学校事務職員の献身や犠牲ではありません。

学校事務職員は、「参画」とか「期待」なんて表面的な言葉に喜んでいる場合ではありません。

事務職員への業務転嫁、事務職員による業務引き受け、そんなことはもうやめるべきだと、高らかに叫びたいのです。