事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

地方選挙と川崎市の議員と統一協会(統一教会)と…議員が社会問題に向き合うありようについて

統一地方選挙が近づいています。

 

私の暮らす川崎市でも市議会議員選挙が行われます。

これに向けて、候補者の方々の駅頭宣伝も毎日のようにお見掛けします。

 

国政の大物政治家と異なり、多くはたったひとりで、地声で政策を訴えつつあるいは挨拶の声をかけつつビラを手渡しています。

私も活動柄、不特定多数に向けた宣伝活動を行ったことはありますが、肉体的にも精神的にもなかなかしんどいものです。不愉快な思いをすることもあります。

またそれ以前に、よくよく聞けば宣伝活動の場所取りもなかなか熾烈なものだそうで。早い者勝ちだから朝の4時5時には活動を始めているのだといいます。とりわけ、特別な支援母体のない個人の新人候補は、そこからして自身でやらねばなりません。本当に大変なものです。

そうしたことも知る中で、政治的立場・見解に対する一致・不一致はもちろんありつつも、候補者の方々のその尽力には斉しく敬意を持ちたいと思うところです。

 

一方で、敬意を持つことと政治的社会的立場や行動に対して批判することは矛盾しません。

今回の選挙に向けては、とりわけ統一協会(※)との関係は重要な判断材料となるべきものだと考えます。

世界基督教統一神霊協会、現・世界平和統一家庭連合。なお、広く一般では略称について「統一教会」と記述されていますが、キリスト教僭称破壊的カルト集団であると認識する立場から私は「統一協会」の記述を用いています。

 

統一協会に対しては十数年前の学生時代に、所属大学の学内への浸透が狙われた中で批判論陣を張った過去があります。

関わりを持ってしまいしかし脱退を望んだ学生の相談に対応し、無事脱退に至るお手伝いもしました。(彼とは今もお付き合いがあります)

当然、それにあたり一通りの批判根拠を持ちましたし、それは今も変わりません。

 

私の世代では下火でしたが、その少し上の世代以上にとってみれば霊感商法合同結婚式といった形で盛んに報道もされ有名な存在であったはずです。

少なくとも40代半ば以上の政治に関わる者が「知りませんでした」は通用しない、あるいは不勉強である、と感じています。いずれであるにしても、政治家としては適格性を欠くものと私は捉えざるを得ません。

 

さて、神奈川新聞が神奈川県議会議員と横浜・川崎・相模原の市議会議員を対象に、統一協会との関係を尋ねるアンケートを実施。2月28日の同紙でその結果が報道されました。

www.kanaloco.jp

こういう調査・報道は全国紙ではなかなか行き届かないもので、地方紙のありがたさを感じます。

 

さて、この中で接点を認めた議員について。

 

川崎市選出県議会議員では中原区の川本学氏(自民党

川崎市議では川崎区の山田瑛理氏、幸区の野田雅之氏、中原区の原典之氏・松原成文氏・吉沢直美氏、多摩区の各務雅彦氏、麻生区の山崎直史氏(いずれも自民党

 

といった面々でした。

 

このほか、県議で川崎区の田中徳一郎氏(自民党)、川崎市議で幸区の加藤孝明氏、中原区の末永直氏、高津区の斎藤伸志氏(いずれも自民党)は、アンケートに回答自体しませんでした。

 

これに先立ち昨年11月には、市民団体が川崎市選出県議と市議会議員に統一協会との関係を問うアンケートの結果を公表・報道されています。

www.tokyo-np.co.jp

神奈川新聞が実施したものとは設問が異なるので回答に差異が生じるのは当然ですが、ここでは上記のうち2人(山田氏・松原氏)が関係を認めています。

着目したいのは回答しなかった議員の方。

県議の田中徳一郎氏、市議の末永直氏、斎藤伸志氏はここでも回答していません。

 

無回答である以上、その意味は推し量るほかありません。

市民団体のアンケートはまだしも(といったら大変失礼ですが)県紙のアンケートにも沈黙を貫く以上、いかなる憶測をされてもやむを得ない、そのリスクを引き受けてでも回答できない事実がある、と、私は解釈せざるを得ません。

 

さて。

中でも中原区自民党への統一教会の浸透度は目を見張るものがあります。

県議の川本学氏、そして市議の4人中3人が関係を認め、残る1人は回答しない、という結果となりました。

その、無回答の末永直氏は実は、統一教会問題を追い続けたジャーナリスト・鈴木エイト氏の著書「自民党統一教会汚染 追跡3000日」(小学館)に登場します。

 

www.shogakukan.co.jp

統一協会が青年部と政治家を引き合わせる会合の情報をつかんだ鈴木氏が、会場に取材に行きます。そこでのやり取りが以下。

 

関係者による取材妨害を受けながらも20名ほどの議員らしき人物を捉えることができた。その中に、面識のある男性がいた。自民党の末永直川崎市議会議員だ。まとわりつく関係者を振り払い末永議員に話しかけた。

「これ統一教会関係ですが大丈夫ですか?」

「付き合いがあって」

「直接、誘いや招待が?」

「そうですね」

付き合いのある議員が招待されているようだ。

 

これによれば、末永直川崎市議は統一協会関係だとわかっていながら、日頃の付き合いから承知の上で会合に参加するほどの関係であるということになります。

 「義務でもないアンケートに回答しなかったことをもってあれこれ憶測するのは不見識ではないか」とのご意見もあると思いますし、場合によっては一理あるとも思います。

しかし、末永氏のこうしたありようを踏まえ、そのうえで本件の「無回答」の意味を憶測するのは不見識ではないと考えます。

 

それにしても、中原区自民党の「統一教会汚染」ぶりは何が原因なのでしょう。

もともと川崎に縁を持たない私は、過去にさかのぼっての川崎の政治状況を承知していません。もしかすると、もともと統一協会と縁の深い大物議員がいたのかもしれません。

国会議員ルートも考えられます。

中原区衆議院の選挙区としては、昨秋の区割り変更前は神奈川10区(他川崎区・幸区)と神奈川18区(他高津区と宮前区一部)に分かれていました。

18区選出は、統一協会とのあまりに濃密な関係の数々が明らかになり、不安定な説明も相まって経済再生担当大臣を辞任した山際大志郎氏。

そして10区選出の田中和徳氏も、川崎駅で自身の名刺とともに統一協会機関紙「世界日報」を配布した人物です。

(なお、アンケートに回答しなかった県議の田中徳一郎氏は田中和徳氏のご子息です)

 

真相はわかりませんがいずれにしても、中原区自民党は国・県・市のすべての層において、統一協会と関係を持った経過のある人物が議員を務めている、ということは事実として整理・認識することとしたところです。

 

一方で。

昨秋の市民団体アンケートで関係を明らかにし、報道機関の取材にも応じている松原成文市議の対応やそこでの言葉は、真摯なものと映ります。

www.tokyo-np.co.jp

 

統一協会との関係をどう評価するか。それは有権者それぞれで異なるのでしょうし、それは当然のことだとも思います。

私は重視しますが、しない方もいらっしゃるでしょう。

ただ、思うのです。

今回、「統一協会との関係」で定点観測をした結果、関係の如何だけでなく、変えられない過去に対してどう向き合うかも浮き彫りになったと思います。

統一協会問題を重視しないとしても、それへの対応のありようは、その議員が社会問題に対してどれほど真摯に向き合うかのリトマス紙として斉しく重視できることなのではないでしょうか。