事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

「学校裁量」というポジティブな響きと、それぞれの業務負担

年始に、Twitterフォロワーさんである近隣他市の学校事務職員の方と、川崎餃子を食べつつお話ししました。

その中で感じた事。

 

私たち学校事務職員は政令指定都市を除いて県費負担教職員という立場にあります。

ですので県費=給与・人事・旅費事務については、市区町村が異なっても同じ県であれば基本的に同じ仕組み・様式・事務執行となります。

 

それに対して学校財務事務は市区町村費ですので、予算額も執行ルールも市区町村により異なることになります。これは政令指定都市も含めて、そうです。

 

そんな、市区町村ごとに異なる学校財務事務。

差異を挙げればキリがないですが、ざっくり大きな違いをいえば、「学校裁量の大小」ではないでしょうか。

「学校裁量の大小」の具体もまたさまざまな形があるのですが、ここでは「学校に予算を配当して学校で契約をする」のか「予算を教育委員会事務局にとどめて学校の申請を踏まえて教委事務局で契約をする」のか、というお話にしたいと思います。前者であれば、配当予算の費目間流用の権限も含むものとします。

 

さて。学校運営予算の学校裁量拡大って、学校事務職員の立場からすると痛し痒しです。

 

予算費目間の流用にしても修繕や委託の契約範囲にしても、権限が教委事務局から学校に移れば、事務執行に係る校内調整負担は軽くなると考えられます。

学校のニーズに合った予算編成を行うことができ、学校の都合に合った契約(工事の日程とか範囲とか)を結べれば、そうでない場合に比べて校内調整は容易になるでしょう。

しかし代わりに、契約事務そのものは単純に増えます。


川崎市の場合、粗大ごみの回収は教委事務局が全校から申請を取りまとめて一括で契約をします。

当然ながらそうなると、回収時期は学校の都合では決められません。

それどころか、私が初任の頃は年3回あったと記憶しているのですが、今は年2回に減りました。(数年前に一度、1回しかなかった年も)

粗大ごみを回収まで保管しておくのはそこそこ面倒なものです。

回収日も指定できないので、回収場所への運搬作業の手配に支障をきたすこともあります。

お話をうかがった他市は各校契約と聞いて、それも良いなと思いました。

思いましたが、契約事務の仕事は単純に増えますね。

どちらが良いものか。

 

川崎市には消耗品一括購入という仕組みもあります。

A4紙や画用紙や模造紙やボールペンやほうきやごみ袋やトイレットペーパーや絆創膏や包帯や湿布や経口補水液やグラウンド用白線や…

…について、教委事務局が年度当初に品目ごとに単価契約を締結し、しかるのちに年3回(A4とトイペと白線は4回)学校から申し込みを受け付けてそれに基づき納品されるものです。

代金は後日、学校配当予算から差し引かれます。

これも実は痛し痒しなところがあります。

一括購入該当物品は原則として一括購入でしか買ってはならず、つまり年3回の機会で在庫切れを生じさせないよう申し込まなければなりません。

私はもう歴を積みましたのでだいたいの目測がつきますが、働きはじめの頃は結構これがプレッシャーでした。

(今だって中学に異動したらニーズが違ってやらかす可能性あり)

A4や白線やトレペは場所を取りますので、在庫置き場の確保も必要です。それにあたっては校内調整が必要です。

別に事務職員が私的に使うわけでもない物品たちなのに、この在庫置き場確保に非協力的な管理職&教員も、中にはいるようです。

そんな課題もありますが、でも、自校で契約をするより事務執行として楽できているのは間違いのないところです。

 

フォロワーさんの自治体はむしろ、なんでも学校契約の風潮のようです。

物品ならともかく、工事や委託の契約にあたっては困難なことも多いことが、お話をうかがってよくわかりました。

 

いずれにせよ、「学校裁量の拡大」は印象だけで言えばポジティブに響きますが、実際のところそこには業務増がセットになることは、考え合わせる必要があると感じます。

併せて、そうした動きは学校側の都合以上に教委事務局側の都合による面が大きいことにも留意します。

行政合理化の進行で教委事務局に余裕がなくなり、様々な業務を学校に投げていく動き。

そういう広い行政合理化の問題も見据えつつ、考える必要があるでしょう。

 

みなさんの地区の学校財務はどうですか?