事務室の鍾声~学校事務職員の発信実践

伊藤拓也 全国学校事務労働組合連絡会議(全学労連)、学校事務職員労働組合神奈川(がくろう神奈川)・川崎支部で学校事務労働運動に参加 川崎市立学校事務職員 Twitter→@it_zgrr

川崎市立学校教職員大量処分~出退勤登録義務違反校長の経歴から問われる川崎市教委の「在り方」

前回に続き、先日の川崎市立学校教職員の大量処分について。

 

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今回は出退勤登録の義務違反について。

 

出勤登録とは出勤簿の電子化

川崎市職ではかなり前(少なくとも15年以上前)から、紙に押印する出勤簿ではなく、ICカードで出勤登録をする電子出勤簿が導入されていました。

学校においても学校用務員・学校給食調理員といった市費負担職員は、かねてその仕組みが適用。

ただ教員・学校栄養職員・学校事務職員といった国庫負担教職員は、県費負担職員であった2016年度まではあくまで県の服務管理・様式が用いられ、紙に押印する出勤簿でした。

2017年度に給与負担が市費移管されたことで、国庫負担教職員にもICカードが配られ、それにより出勤管理がなされることとなりました。

(なお、いまも非常勤講師は紙の出勤簿です)

 

勤務時間管理として出退勤登録へ

当初はあくまで出勤簿の代わりでしたので、出勤時にのみICカードで出勤登録をする仕組みであり、退勤時は不要でした。

しかし働き方改革の政策の中で勤務時間の管理が迫られるなか、2018年から退勤登録も導入されました。

はじめは学校以外の市職場に、その後しばらく遅れて、学校にも導入という経過でした。

以来かれこれもう5年超。出勤時と退勤時にはICカードでその登録をすることとなっています。

 

登録しないとどうなるの

電子化された出勤簿は給与支給の根拠となっており、そのため月々の各職員の勤務状況(出勤・退勤・休暇等)を確定させる「月締め」という業務があります。

日々の勤務状況の管理は当然ながら管理職の職務ですが、月締めについては給与事務であるとの位置付けのもと、学校においては基本的に学校事務職員の職務です。

学校により教頭がやっている(抱えて離さない)ところもあるようですが、市費移管時に学労川崎は「県費事務における月末の給与資料報告と同じ機能なので、給与事務として事務職員の職務」との説明を受けた経過があります。

それで、この月締めにあたって出退勤の登録欠損があると、そのまま月締めはできません

所定の勤務時間、始めから終わりまで勤務していた(あるいは休暇を取っていた・出張で職場を離れていた)ことが明らかでない以上、そのまま満額給与支給するわけにはいかないからです。

じゃあどうするか。

管理職たる校長ないし教頭が、日々の出退勤登録状況を電子システム上で確認し、登録漏れがあった場合は当該職員に出退勤時間を聞き取ったうえで(あるいは自身の目視した時間をもとに)、「手入力」します

ただ管理職の中には、日々の出退勤登録状況のチェックを怠る方もいます。

その場合しばしば、月締めをしなければならない事務職員の方で管理職に対応を促したりします。

ともあれ。

出退勤登録、たまのうっかり忘れなら、それでおしまいです。

 

別の誰かの仕事は増える

それで、おしまいなんですが。

ただ、出退勤登録の懈怠というのは、上記の通り校長・教頭・学校事務職員に余計な業務を強いることです。

私自身、この業務を担当していてよくわかりますが、出退勤登録を怠る人は決まっているものです。

私は別に管理者ではありませんから、確たる信念があって出退勤登録をボイコットしているのなら全然構いませんし、なんなら応援したい気持ちもあります。

でも、そういうわけでもないようで。

そうなると、いわゆる「怠慢」で同僚の仕事を増やしているということで、増やされる側としては良い気持ちはしません。

出勤日の3分の1以上で出退勤登録をしなかった33人。その方々は3日に1回、別の誰かにしなくて済んだ業務を強いてきたことになります。

 

子どものため?

それで、旅費不正受給でも同じようなことを書きましたが。

教員のこの手の話をすると、決まって「子どものためだった」「児童生徒対応を優先して忘れてしまった」みたいな話が出てきます。

より大切な何かのために、抱える責務を敢えて投げ打ったり忘れてしまうことは、確かにあるでしょう。

でも、5秒とかからない出退勤登録を、日常的にしなかったこと。それを「子どものためだった」と言うのでしょうか

 

元「服務監察担当課長」が「服務義務違反」

そして、懲戒処分を受けた教頭1人と校長2人。

年間110日~192日(年間平日はだいたい240日)、出退勤登録をしなかった管理職。

実は全員、お会いしたことがあります。

とりわけ校長2人についてはよく存じ上げており、そしてだからこそ、心底呆れた気持ちになりました。

お二人とも、かつて川崎市教委で「教職員人事・服務監察」の担当課長だった方。

その職にあった当時、学校事務職員向け研修の、企画・開催の責任者でもありました。

当時私は組合で研修問題の担当でしたので、何度も直接やり取りした関係です。

ただの校長でももちろん問題ですが、もともと市教委の課長として現場に指導していた方が、しかも2人も、日常的に出退勤登録をしていなかった形です。

より増して、問題は大きいと考えます。

 

市教委の責任と今後の対応

なぜ、かつて服務監察担当課長まで務めた現役校長が、服務義務違反に及んだのか。

あるいはさかのぼって、後にこのような服務義務違反に及ぶ方をなぜ当時、服務監察担当課長に充てたのか。

鶏が先か卵が先か。どちらが先でも結構ですが。

当該校長の経歴を踏まえれば、本件は単なる個人の服務義務違反にとどまらず、川崎市教委の人事政策が問われる事件です。

加えて前回の投稿と重なりますが、旅費不正受給で処分された校長3人に加えてこちらの2人も、60歳超の「暫定再任用校長」です。

定年引上げの施行とともに今年度から始まった「暫定再任用職員」。これについて総務省は、「管理監督職に充てることについては慎重に判断する必要がある」としています。

これも前回投稿の繰り返しになりますが、そもそも「再任用校長」自体全国的には極めて例外です。

他の自治体の動向とも総務省の見解とも異なる形で「(暫定)再任用校長」を多用してきた川崎市教委。そこから5人もの懲戒処分被処分者を生み出しました。

この点でも市教委の責任は大きいし、人事政策について何らかの対応が必要でしょう。

 

「在り方検討」

川崎市教委はいま、「学校事務職員の在り方検討」を進めています。

「学校事務職員の能力活用」「職務・役割分担の見直し」「質の向上」「人材育成」などがキーワードです。

しかし、校長5人を含む200人超の教職員が処分される事態に至った今般。

川崎市教委当局や校長の「在り方」の方が、よほど議論されるべきではないでしょうか。

川崎市立学校教職員大量処分~旅費不正受給について現場から感じること

昨日、川崎市教育委員会は多数の市立学校教職員に懲戒処分等を発したことを公表しました。

 

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私の知るところも少なくなく、また感じるところも多々ありましたので、以下それを残しておきます。

今回は旅費の不正受給に絞って。


制度のお話

川崎市では昔から、自家用自動車等の出張利用は基本的に認められていません。

ここで言う「自動車等」は、自動車・バイク・自転車を指します。


自家用と公用

「自家用」ですから、公用車なら可です。

ただ公用の自動車やバイクが存在する学校は知る限り存在しません。

公用自転車であれば、どの学校にも複数台あるはずです。

 

自家用自動車等による出張の実態

基本的に認められていない自家用自動車等による出張。

しかし実際には、広く行われていました。

自身が出張で教育会館に行けば、自家用であることが一目瞭然の自転車が駐輪場にズラリ。

自校が研修会等の会場になれば、どう見ても自家用自転車、さらにはバイクでも来る来る、他校教職員。

こうした実態は、学校の教職員だけでなく教育委員会の課長級職員にも知る者は多かったはずです。

(課長級職員には教員出身者も多数おりますし)

 

今回の処分

自家用自動車等の出張利用。

それ自体制度違反ですが、今回の処分では100%不問に付されています。

今回の処分の理由は

「自家用自動車等を利用したこと」

ではなく

「実際には払っていない交通運賃を払ったと虚偽の届け出をして、その運賃額を受給したこと」

です。

この点、自家用自動車等の出張利用を原則認めないという制度の是非とは、まったく別の話だと私は考えます。

 

「制度が悪い」?

そもそも、出張に自家用自動車等を利用できないという制度はおかしいのではないか。

そういう意見は意見で、もちろん成り立つでしょう。

既存の制度を問題視し改善を希求することは、とても重要です。

しかし。

制度が悪いのだから乗ってもいないバス代を請求して良い、という話にはなりません

私自身はこれまで、川崎市の様々な既存制度を問題視し、改善要求に取り組んできたと自負しています。

そうして、実際に改善を勝ち取った事柄も複数あります。

そうした立場だからこそ、制度の問題と公金の虚偽請求・不正受給を混同した議論は、やめてほしいと思います。

 

教員いじめ?

川崎の学校の話ということで昨年のプール水問題と絡める声も、ネット上に散見されます。

しかしこれはまったく別の話。

「別の話」と言うと、「教員不足とは別の話」と公言してしまった福田市長とカブるのでアレですが…。それはさておき。

特殊性の高い設備の操作上のミスと、乗ってもいないバス代を請求した行為を同列視するのは、いくらなんでも筋が悪いと思います。

 

「子どものためだった」?

児童生徒対応のためにギリギリまで学校にいて、それで早く移動できる手段を使った、という声。

どうやら当事者の教員たちの中にも、そう述べている方がいるようです。

ただ現場を知る者としては、ほとんどについて因果関係が逆だと推察します。

最初は交通機関で行くつもりだった、しかし児童生徒対応のため乗るはずだった交通機関に乗れなかった、次も同様になる可能性を考えて以後自家用自動車等を使うようになってしまった。

そういうことなら確かにそうでしょう。

しかし申し訳ないけれど、違うと思うのです。

証明材料となりうること。それは処分事由の出張のうち、自宅直行ないし直帰の割合。

それから当該職員が通勤に自家用自動車等を使用している割合。

おそらくどちらも、かなり高い数値となるでしょう。

学校と出張先の移動の問題よりも、自宅と出張先の移動の問題。

自家用自動車等を利用した理由の多くはそれではないかと思います。

なお、ここまでのことが全部的外れだったとしても。

「子どものため」だったから、乗ってもいないバス代を請求して良い、という話にはなりません

そんなことに「子ども」をダシにするのは、いかがなものでしょう。

 

当局の肩を持つのか

労働組合役員の立場で、当局の処分に対する批判の声にこうして反論するのは、かなり逡巡しました。

一方で旅費事務は学校事務職員である私にとって重要な職務であり、その公正な執行は責務です。そこには私なりの職業倫理も宿っています。

また、私も一市民として、川崎市に納税している身でもあります。

本件。公務員が不正に公金をポッケに入れた、というお話。

そうした話について、労働者無条件擁護でいかなる処分も許さない、という立場には私は立てません。

 

処分の問題

ただ、発端となった昨年3月の処分と均衡が取れているかは、疑問を持ちました。

昨年の処分では、校長が減給3月(ただし再任用終了のため実質3日)、教頭が減給1月でした。

一方今回の処分には校長3人と教頭1人がいますが、いずれも戒告です。

ついでに言えばこれは処分そのものとは違いますが、昨年と違い報道にも、旅費を不正受給した校長が校長を務める学校名は出てきていません。

昨年の処分理由では、当人の不正受給よりも先に筆頭に、同校で不適切な処理が行われてることを知りながらすぐに対応しなかったことが挙げられています。

強いて言えばこれが理由でしょうか。


校長の問題

昨年の処分もそうでしたが、今回不正受給で処分対象となった校長3人も全員60歳超です。

そもそも全国的には極めて例外的な「再任用校長」が、川崎では当たり前に横行していることは、妥当なのでしょうか。

さらに、今年度から地方公務員には定年引上げと合わせて役職定年制が導入されています。

60歳を超えたら管理職たる校長からは降りるのが、法的にもスタンダードとなりました。

しかしながら川崎市教委は、例規定を適用し、引き続き60歳超の校長を多用しています。今年度も60歳超の「暫定再任用校長」を多用し、また来年度以降も特例規定の適用により60歳超校長の任用を検討しています。(2月21日16:30訂正)

私の所属する組合は、これに反対しました。

「学校は特別」「教育職は特別」といった意識は、労働現場としての学校をガラパゴス化させ、ひいては給特法等に代表されるように他では通用しない劣悪な労働条件を導入・温存させるものだと考えたためです。

別稿に譲りますが、同日に処分が公表された服務規程違反の被処分校長2人も、60歳超つまり特例措置校長です。

川崎市教委の人事政策そのものの問題も、浮き彫りになります。

そんなわけで、全然当局の肩は持っていません。

 

つづく

川崎市教委の人事政策という点では、同日のもう一件。出退勤管理をめぐる処分にもつながります。

それは次回に。

 

※2月17日7:25、一部加筆修正

精神疾患による休職+病気休暇の状況比較~「休職」までの期間に自治体差あり、こちらの数値の方が現状を反映?

前回の投稿に続き、今回も文部科学省「公立学校教職員の人事行政状況調査」より。

 

it-zgrr.hatenablog.com

前回は精神疾患による「休職」に関する集計でしたが、今回はこれに1か月以上の病気休暇取得者も含めた状況について、お示ししておきます。

1か月以上の病気休暇取得者も含めた数値は、2016年度分より公表されています。

 

 

こちらの集計・比較においても在職者に占める割合について、学校事務職員の方が教育職員を上回ること、両者の差は21年度まで拡大し続け22年度は縮まったもののなお大きく上回る状況であること、学校事務職員における割合は調査開始以来一貫して上がり続けていることがわかります。

 

いずれも、おおむね割合同様に推移しています。

 

 

ところで。

12月初頭に全学労連の拡大事務局会議があった際に兵庫の学労から聞いたのですが、同県は精神疾患による病気休暇を、2年間取得できるそうです。(…が、このほど教員以外は短縮…とも)

私などは「病気休暇は90日過ぎると休職」というのが全国共通と思い込んでいたのですが、それをきっかけに聞いてみると、他にも90日を超えても休職ではなく病気休暇が続く県があることがわかりました。(例えば180日)

 

そうした自治体の違いを踏まえると、「休職」よりも「休職+1か月以上の病気休暇取得者」の方が、実態を反映したものと言えそうです。

休職発令までの期間がまちまちであるということは、該当者の条件が違うということになります。

 

実際、人事行政状況調査におけるそれぞれの都道府県・政令市ごとの割合を見ますと、教育職員の精神疾患による休職割合は全国平均0.71%のところ兵庫県は0.15%と、ダントツの少なさです。

一方で1か月以上の病気休暇取得者を含めた場合においては、全国平均1.33%のところ兵庫県は0.74%と、これも確かに低い数字ではありますがトップではありません。

これは、病気休暇期間の長さが影響しているものと推察されます。

 

「休職」の数値に焦点が当てられていますが、その妥当性も顧みる必要がありそうです。

精神疾患による休職~「教員・初の6000人超」報道の裏で「学校事務職員・初の1%超」の衝撃

文部科学省が毎年公表している「公立学校教職員の人事行政状況調査」。

昨日、2022年度の調査結果が公表されました。

 

www.mext.go.jp

 

結果概要の筆頭には、以下の内容が盛り込まれています。

 

教育職員(※)の精神疾患による病気休職者数は、6,539人(全教育職員数の0.71%)で、令和3年度(5,897人)から642人増加し、過去最多。

 

このことは昨日のうちに、大きく報道されています。

 

www3.nhk.or.jp

さてこの数年、人事行政状況調査の結果公表では、教育職員の精神疾患による休職状況に焦点が当てられています。

この人数が初めて公表されたのは2011年度調査結果から。(このとき09・10年度の結果も同時に公表)

それ以前の人事行政状況調査結果では、「指導が不適切な教員」への対応状況や「民間人校長」の登用状況がメインでした。このうち民間人校長登用状況は、最近の調査結果においてはほとんど見て取ることはできません。

同じ名称の調査公表でも経年で見ると、調査事項や概要の重点の変遷がそのまま公立学校に係る人事行政上の課題の変化を表していると考えられ、それのみに着目しても示唆に富みますね。

 

精神疾患による休職状況のお話に戻ります。

人事行政状況調査では学校事務職員・学校栄養職員精神疾患による休職状況も、教育職員に1年遅れた2012年度調査結果から、公表されています。(ただし19・20年度は調査実施されず)

私はこれをもとに、学校事務職員の精神疾患による休職状況を集計。在職者に占める同休職者割合を教育職員のそれと比較したところ、学校事務職員の方が教育職員を上回る高い割合で精神疾患による休職者が出ていること、しかも両者の差は年々拡大していることがわかりました。

 

この事実をもとに書いたのが、全学労連ニュース445号(23年2月25日)

「しんどいのは教員だけではない!事務職員が仕事を引き受けるのではなく学校業務全体の負担軽減を目指す労働組合運動を」

でした。

gakurou2006.web.fc2.com

今回、2022年度の結果を受けグラフを更新しました。

他にも関連グラフを掲載し、若干のコメントを付しておきます。

 

 

教育職員の精神疾患による休職割合は20年度までおおむね横ばいでしたが、21年度以降跳ね上がっています。

一方学校事務職員については、15年度以降右肩上がりに上がり続けており、しかも22年度調査の増加ポイントは過去最大。ついに1%を超えてしまいました。

こうした経過に由来し、学校事務職員と教育職員の割合差は拡大し続けています。22年度調査結果においてもそうした傾向は変わらず、わずかながら差が開く結果となりました。

 

割合同様、20年度まではおおむね横ばいです。人数で見ると09・10年度時点でも相当に深刻な状況があったことがわかります。

 

おおむね割合同様に推移しており、15年度以降右肩上がりに増加しています。


今回、教員の精神疾患休職者が初めて6,000人を超え、インパクトのある数字となっています。

こうした状況を是正すべく、労働条件・労働環境の速やかな改善が求められることは言うまでもありません。

そうした中で、「働き方改革」も改めて叫ばれることになるでしょう。

 

しかし目下、「働き方改革」の名の下に学校事務職員への業務転嫁(押し付け)が広がっていること。そうした取組に文科省が率先して旗を振り、教育委員会や現場校長が強行し、さらには教職員組合までもが推進していること。

それのさらなる進行は、強く強く危惧します。

 

学校事務職員の精神疾患休職率が教員を大きく上回っている現実。

学校事務職員の100人に1人が、精神疾患で休職しているという現実。

この現実を踏まえて、私は学校事務職員生活を送っていきたいと思っています。

【調査報告】共同実施・共同学校事務室と「事務の適正化」の実態~着服・横領事例はすべて共同実施導入自治体

学校事務の共同実施・共同学校事務室の意義のひとつとして、「事務の適正化」は必ずといっていいほど挙げられるものです。

ほかに、「事務職員の育成及び資質の向上」「事務処理の質の向上」も同じ系統と言えるでしょう。

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なるほど、確かに同じ職種同士で集まって情報交換や業務の相互チェックをすれば、「事務の適正化」が図られるとする考えには一理あると思います。

しかし、それは共同実施や共同学校事務室が「情報交換や業務の相互チェック」という機能にとどまっている範囲においては、のことです。

それにとどまらず、共同実施や共同学校事務室が事務職員の人員削減や担当業務増をもたらすようになった場合、つまり労働環境の悪化をもたらした場合において、なお「事務の適正化」は担保されるのか。

私は強い疑念を抱きます。

 

一般に、労働環境が悪くなればなるほど、故意か過失かは別にして業務の適正性は低下します。それは学校事務職員の場合も同じです。

 

そうした課題もひっくるめて、共同実施・共同学校事務室は本当に「事務の適正化」につながるものであるのか。

机上の想定ではなく、事実を基礎に探ってみたいと考えました。

 

ついて今回、昨年度と今年度に処分が発せられマスコミ報道された、学校事務職員(小中学校・常勤職員のみ)の業務上の行為による懲戒処分事例を収集。

合わせて、当該自治体での共同実施・共同学校事務室の導入状況と突き合わせることで、共同実施・共同学校事務室と「事務の適正化」の関係についてまとめてみました。

以下、ご報告します

 

▽報道の収集手法

利用サイト①:Ceek.jp News(https://news.ceek.jp

検索語=学校 事務職員 懲戒

除外=高校 県立学校 特別支援学校 盗撮 住居侵入 窃盗 交通違反 暴行 PTA事務職員 会計年度任用職員

検索後除外=住居侵入23.7、窃盗23.5、PTA職員23.4、高校23.3、教委職員23.3、教職員23.2、書類送検23.1(懲戒処分20年)、高校22.12、不起訴処分22.10・書類送検22.6(懲戒処分21.7)、高専22.9、会計年度任用職員分限22.8

利用サイト②:Googlehttps://google.com

検索語=学校 事務職員 懲戒

検索後除外=高校、飲酒運転、等

 

▽学校事務職員の業務上の行為による懲戒処分事例(処分の数字は月数)

23.9 政令A市 給食費請求漏れ・過大集金 50代 減3

23.8 四国B町 決裁偽造、物品購入未払・未発注 20代 停12

23.8 政令C市 決裁偽造 20代 停1

23.7 関東D市 徴収金着服 30代 免

23.7 東北(市町村不明) 就学奨励費支給遅延 50代 戒

23.6 政令E市 就学援助費横領 40代 免

23.5 関東F市 徴収金着服 40代 免

23.5 関東G市 徴収金着服 30代 免

23.3 政令H市 旅費不正受給 40代 減1

23.3 東北I市 徴収金不適切管理 20代 減1

23.2 九州J市 パワハラ 50代 停6

22.12 政令K市 不適切発注・会計処理 30代 停6

22.12 政令L市 徴収金横領 30代 免

22.11 政令M市 架空取引 30代 停1

 

▽共同実施・共同学校事務室の導入状況

文部科学省教育委員会における学校の働き方改革のための取組状況調査結果」中、「学校事務の共同実施をしている」の設問に拠った。(19年度~22年度回答)

 

▽懲戒処分事例のあった自治体における共同実施・共同学校事務室導入状況

(順に2019年度~22年度の回答:○実施 △検討中 ×未実施)

A市 ○ ○ ○ ○

B町 ○ ○ ○ ○

C市 ○ ○ ○ ○

D市 ○ ○ ○ ○

E市 ○ ○ ○ ○

F市 ○ ○ ○ ○

G市 ○ ○ ○ ○

H市 × △ △ △

I市 ○ ○ ○ ○

J市 ○ ○ ○ ○

K市 ○ ○ △ ○

L市 △ ○ ○ ○

M市 × △ ○ △

 

▽分析

・過去3年(20~22年度)について、13市町中11市町・約85%で共同実施導入済みである。

・22年度時点の共同実施の実施率(都道府県を除く)は72.4%であり、懲戒処分事例のあった自治体の割合はこれを上回る。

・着服・横領による懲戒免職5市はいずれも過去4年、共同実施導入済みである。

 

 

以上の事実からは、共同実施・共同学校事務室が「事務の適正化」や「事務職員の育成及び資質の向上」「事務処理の質の向上」につながるものであるか、疑問が生じると結論付けざるを得ません。

政策の導入は、印象や誰かの売り文句ではなく、事実に基づき吟味されるべきだと私は考えます。

「平準化」シリーズ④〜誰にとっての平準化か、を吟味すること

このところ、締切モノの書き物・発表物に追われています。

もともと私はローカル人材(´∀`)なので、広い枠組みに向けた発信の経験が少ない。

それでも自分自身がメンバーになっている組織体の中での発信であれば、やらかしても自分で責任をかぶれば良いわけですが、そうではないところにご招待いただいた場合はそうもいかない。招待者の顔を潰すことになってはいけない、と思うわけです。

というわけで、ブログを更新することで締切を絶対に破らない誓いとします。

重石です。ブログ更新してたんだから、間に合いませんでしたは通用しねぇぞ?と自分を追い込むわけです٩( 'ω' )و

 

さて、シリーズ4発目です。今日は2022年10月のツイートを元に…。

 

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「事務職員職務の平準化/標準化」の具体は「担当職務の平準化/標準化」、要はどこの学校でも同じ職務担当をすべしとして構想されがちですが、これは大間違いだと断言できます。

給与・旅費事務は職員の、財務事務は予算の、徴収金や就学援助事務は該当児童生徒の、それぞれ多寡により断じて平準ではありません。

 

また川崎市でやっている、外部講師招聘の事業費事務も同様です。

私の初任校では月々2件3件当たり前にあった事務でしたが、現任校では年間2件3件。

でも、「担当職務の平準化/標準化」で言えば、その両校は平準であり標準化されているということになります。

付言すれば、初任校でも現任校でも事務職員は私ひとり。

 

さてその前提で。

学校事務職員としての職務経験など一切ないまま単数配置された初任校では担当せず、10年の経験をもって着任した現任校では担当している学校徴収金や就学援助の事務を、これは初任校でもやるべきだった、それが「平準」だ、という話になるでしょうか?

そんなバカな話があってたまるか、と私は思うのです。

 

学校事務職員職務の平準化/標準化は、話者の立場によってその意味を変えるものです。

例えば、学労の多勢は「標準的職務」に批判的でしたが、内部に異なる立場もありますし、私自身若い頃「標準的職務」はかえって業務過多と闘う武器として大いに助けられた経過もあります。

ただそれは、川崎市の「標準的職務」通知が、事務職員個々の事情を踏まえ過重な負担を戒める文言を盛り込んだつくりであった(今もある)からこそです。

そこには、話者としての事務職員の立場も込められていると言えましょう。

一方、話者の立場に照らした吟味をせず上からの職務平準化/標準化を素朴に受け入れるのは、危険なことです。

 

ひるがえって。

 

自己の過去と現在のリアルな職務に向き合い顧みてみれば明白なことを、川教組(日教組)事務職員部がまったく認識せず、機械的な平準化標準化論と「つかさどる」「参画」「新しい役割」を当局以上に当局目線で説教して回る姿。

 

普段どんなつもりで何の仕事をしているのか、不思議で仕方がありません。

 

「平準化」シリーズ③〜学校事務職員への「期待」は過重・不当要求ではないか?

昨日は採用同期の親友と昼から飲んでました。

彼の家と自分の初任校が近く、後には自分もその近辺に引っ越して、かつお互いお酒好きだったので、ピーク時には週3で飲んでた間柄です。

彼は実家暮らし・私は一人暮らしだったので、よくウチに泊まって夜通し飲んだものです。

昨日もとても楽しいお話を聞きました。一番面白かったのは、最近教育委員会事務局の高位職員(←私もよく知っている)と喧嘩になった話(←完全にあちらが悪い)…。

うちの組合入って欲しいんだけどなー。入ってくれない( ;∀;)

 

さて、シリーズです。今日は2022年4月のツイートを元に…。

 

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教育委員会事務局や教職員組合日教組)は、学校事務職員に「業務内容・水準・能力を平準化標準化すること」と「専門性を高めること」の両方を要求します。

けれど、「事務手続きの適正処理・期限遵守」と「水準の高い教育活動」とを両立できてる教員はどれだけいるでしょうか。

 

教育委員会事務局にしても、期限を守らない・問い合わせに回答するのを忘れる・回答したことを反故にする・異動の時引き継ぎしない…方々、そしてそういう課題を把握もしていない管理職。そんな方を私はゴマンと見てきています。(組合対応の話ではなく業務上の話)

 

そんな方々に説教される「平準化標準化」「専門性」とは…。

 

これはそういう教員や事務局職員を叩いてるのではなくて、ただ他がそんななのになんで学校事務職員にだけ過重な要求をするの?という話なのです。

ゼネラリスト的業務とスペシャリスト的業務を同時進行で担え、なんて要求される公務職員、他にどれだけいますか?

しかも職場にひとりふたりの職で。

しかもヒラで。

 

働き方改革

「能力活用」

「専門性」

そんな装飾を施しつつ今進められている学校事務職員の「役割」論の内実は、客観的には過重要求・不当要求の域にあると、私は感じています。

文科省教育委員会も校長も日教組も…「教育ムラ」はその方向で共犯関係。

 

このままでは過重労働で潰される。そういう危機感を持っています。否、すでにそういう状況が生まれているでしょう。そしてそれはこのままだとさらに進行するでしょう。

 

どうする?

 

学校事務職員の自立的な立場から、声をあげていくしかないと思います。