前回に続き、先日の川崎市立学校教職員の大量処分について。
今回は出退勤登録の義務違反について。
出勤登録とは出勤簿の電子化
川崎市職ではかなり前(少なくとも15年以上前)から、紙に押印する出勤簿ではなく、ICカードで出勤登録をする電子出勤簿が導入されていました。
学校においても学校用務員・学校給食調理員といった市費負担職員は、かねてその仕組みが適用。
ただ教員・学校栄養職員・学校事務職員といった国庫負担教職員は、県費負担職員であった2016年度まではあくまで県の服務管理・様式が用いられ、紙に押印する出勤簿でした。
2017年度に給与負担が市費移管されたことで、国庫負担教職員にもICカードが配られ、それにより出勤管理がなされることとなりました。
(なお、いまも非常勤講師は紙の出勤簿です)
勤務時間管理として出退勤登録へ
当初はあくまで出勤簿の代わりでしたので、出勤時にのみICカードで出勤登録をする仕組みであり、退勤時は不要でした。
しかし働き方改革の政策の中で勤務時間の管理が迫られるなか、2018年から退勤登録も導入されました。
はじめは学校以外の市職場に、その後しばらく遅れて、学校にも導入という経過でした。
以来かれこれもう5年超。出勤時と退勤時にはICカードでその登録をすることとなっています。
登録しないとどうなるの
電子化された出勤簿は給与支給の根拠となっており、そのため月々の各職員の勤務状況(出勤・退勤・休暇等)を確定させる「月締め」という業務があります。
日々の勤務状況の管理は当然ながら管理職の職務ですが、月締めについては給与事務であるとの位置付けのもと、学校においては基本的に学校事務職員の職務です。
学校により教頭がやっている(抱えて離さない)ところもあるようですが、市費移管時に学労川崎は「県費事務における月末の給与資料報告と同じ機能なので、給与事務として事務職員の職務」との説明を受けた経過があります。
それで、この月締めにあたって出退勤の登録欠損があると、そのまま月締めはできません。
所定の勤務時間、始めから終わりまで勤務していた(あるいは休暇を取っていた・出張で職場を離れていた)ことが明らかでない以上、そのまま満額給与支給するわけにはいかないからです。
じゃあどうするか。
管理職たる校長ないし教頭が、日々の出退勤登録状況を電子システム上で確認し、登録漏れがあった場合は当該職員に出退勤時間を聞き取ったうえで(あるいは自身の目視した時間をもとに)、「手入力」します。
ただ管理職の中には、日々の出退勤登録状況のチェックを怠る方もいます。
その場合しばしば、月締めをしなければならない事務職員の方で管理職に対応を促したりします。
ともあれ。
出退勤登録、たまのうっかり忘れなら、それでおしまいです。
別の誰かの仕事は増える
それで、おしまいなんですが。
ただ、出退勤登録の懈怠というのは、上記の通り校長・教頭・学校事務職員に余計な業務を強いることです。
私自身、この業務を担当していてよくわかりますが、出退勤登録を怠る人は決まっているものです。
私は別に管理者ではありませんから、確たる信念があって出退勤登録をボイコットしているのなら全然構いませんし、なんなら応援したい気持ちもあります。
でも、そういうわけでもないようで。
そうなると、いわゆる「怠慢」で同僚の仕事を増やしているということで、増やされる側としては良い気持ちはしません。
出勤日の3分の1以上で出退勤登録をしなかった33人。その方々は3日に1回、別の誰かにしなくて済んだ業務を強いてきたことになります。
子どものため?
それで、旅費不正受給でも同じようなことを書きましたが。
教員のこの手の話をすると、決まって「子どものためだった」「児童生徒対応を優先して忘れてしまった」みたいな話が出てきます。
より大切な何かのために、抱える責務を敢えて投げ打ったり忘れてしまうことは、確かにあるでしょう。
でも、5秒とかからない出退勤登録を、日常的にしなかったこと。それを「子どものためだった」と言うのでしょうか。
元「服務監察担当課長」が「服務義務違反」
そして、懲戒処分を受けた教頭1人と校長2人。
年間110日~192日(年間平日はだいたい240日)、出退勤登録をしなかった管理職。
実は全員、お会いしたことがあります。
とりわけ校長2人についてはよく存じ上げており、そしてだからこそ、心底呆れた気持ちになりました。
お二人とも、かつて川崎市教委で「教職員人事・服務監察」の担当課長だった方。
その職にあった当時、学校事務職員向け研修の、企画・開催の責任者でもありました。
当時私は組合で研修問題の担当でしたので、何度も直接やり取りした関係です。
ただの校長でももちろん問題ですが、もともと市教委の課長として現場に指導していた方が、しかも2人も、日常的に出退勤登録をしていなかった形です。
より増して、問題は大きいと考えます。
市教委の責任と今後の対応
なぜ、かつて服務監察担当課長まで務めた現役校長が、服務義務違反に及んだのか。
あるいはさかのぼって、後にこのような服務義務違反に及ぶ方をなぜ当時、服務監察担当課長に充てたのか。
鶏が先か卵が先か。どちらが先でも結構ですが。
当該校長の経歴を踏まえれば、本件は単なる個人の服務義務違反にとどまらず、川崎市教委の人事政策が問われる事件です。
加えて前回の投稿と重なりますが、旅費不正受給で処分された校長3人に加えてこちらの2人も、60歳超の「暫定再任用校長」です。
定年引上げの施行とともに今年度から始まった「暫定再任用職員」。これについて総務省は、「管理監督職に充てることについては慎重に判断する必要がある」としています。
これも前回投稿の繰り返しになりますが、そもそも「再任用校長」自体全国的には極めて例外です。
他の自治体の動向とも総務省の見解とも異なる形で「(暫定)再任用校長」を多用してきた川崎市教委。そこから5人もの懲戒処分被処分者を生み出しました。
この点でも市教委の責任は大きいし、人事政策について何らかの対応が必要でしょう。
「在り方検討」
川崎市教委はいま、「学校事務職員の在り方検討」を進めています。
「学校事務職員の能力活用」「職務・役割分担の見直し」「質の向上」「人材育成」などがキーワードです。
しかし、校長5人を含む200人超の教職員が処分される事態に至った今般。
川崎市教委当局や校長の「在り方」の方が、よほど議論されるべきではないでしょうか。