仕事柄、と関係あるかどうかはわからないが、ある時期から税制に興味を持つようになった。
といっても、法律的あるいは経済的なところを学ぶまではいかなくて、どういうところに大きく課税しどういうところに税負担を軽くすることにより……とかいう、まあ目新しくもなんともない発想止まりの興味ではある。恥ずかしながら。
ただ、かねてから「ふるさと納税」制度はおかしいのではないかと思っていたところである。
私は労働者の立場に立つことを旨としているので、当然逆進性の高い税制に反対だ。
ざっくり言えば、金持ちから取って再分配をする、それを税制の基本に据えるべきだと思っている。
ふるさと納税は完全に逆進性の税制度だ。
加えて、是非は別にしても現行前提とされているはずの、公金制度の原則からも外れる。
明らかに政治案件だ。
そんなふるさと納税を強く進めた国会議員が、国の首相になろうとしている。公平な税制も公金にまつわる大原則も無視する人が。
次の記事はその辺りが説得力ある形で示されている。
菅官房長官に意見して“左遷”された元総務官僚が実名告発「役人を押さえつけることがリーダーシップと思っている」〈週刊朝日〉(AERA dot.) - Yahoo!ニュース
抜粋
「少しでも税制度のことを知っている人なら「こんな制度はおかしい」と思っています」
「自治体間の返礼品競争が激しくなることもわかりきっていました。その結果、アマゾンのギフト券を返礼品として配る自治体も出てきました。事実上の現金還元です」
「年収1億円ほどと思われる著者が、600万円のふるさと納税をすることで税金の還付を受け、さらに手数料を除いた599万8000円に対する返礼品について<お取り寄せグルメ>と表現し、<これ、まじで生活できちゃうじゃないか……>と書いてありました」
「日本が戦争で負けたのは、米国と戦っても負けることはわかっていたのに、軍人を含む官僚たちが政治家に客観的な事実を報告しなかったからです。政治家にとって耳の痛い話でも、役人は事実をちゃんと報告することが仕事です」
「高額所得者が自分の住んでいる自治体に税金を払わずに、高級肉やカニなどをもらっている。税金とは、国民の財産から現金を無理に納めてもらうという意味で、役人にとって神聖な仕事です。ふるさと納税は、そういった神聖な税制度の根幹を揺るがすものなのです」
「ふるさと納税は、やった方が経済的合理性があるのですから、高額所得者が返礼品をもらいたいと思うのは当然のことです。問題は、こういう制度をつくってしまったこと」
「寄付した人の金額の5割が税収から失われているということです。返礼品を紹介するウェブサイトは、ふるさと納税の金額から15%ほどの手数料を得ていると報道されています。近年ではテレビなどでウェブサイトの広告が出ていますが、これも原資は地方自治体の税収になるはずだった税金です」
ふるさと納税は他にも住民税の流出といった問題がある。
ふるさと納税は納税者目線だけで税務を捉える傾向を促進している。それにより自身が暮らす自治体の財政を考える機会はますます減り、そうしてますます有権者・主権者としての感覚がなくなっていく。
カネの話以上に、そこが深刻な問題だと思う。
自治体間の財政力の問題は国の地方交付税交付金により対応するべきものであるはずだ。
これが「自助」をはじめに置き「公助」を最後に置く発想なのだろうか。
それは助けでもなんでもなく、本来やるべき当たり前の仕事なのだけど。